東京大空襲六十年に当る年の春、芳賀徹氏のご推薦により、ミネルヴァ書房の<ミネルヴァ日本評伝選>の一冊として、ウナックトウキョウを主宰する海上雅臣著『書は万人の芸術である―井上有一』が上梓されました。
 ―この評伝選のつらなりのなかから、列島の歴史はおのずからその複雑さと奥ゆきの深さをもって浮かび上がってくるはずだが、これを読むとき、私たちのなかに新たな自信と勇気が湧いてきて、その衿持と勇気をもって『グローバリゼーション』の世紀に立ち向かってゆくことができる。―
 このように標榜する日本歴史再検証の人物評伝シリーズに井上有一が登場しました。
 今回の執筆に当って著者は、作品紹介のために『これまで提示してきた資料やその解釈によって作られてきた』豪快な芸術家のイメージを離れて、彼の残した大学ノート百六十三冊の克明な日記をもとに、生活と芸術を両立させようと苦闘したそのままを自画像とし、類例をみない型破りの凡人として浮かび上がらせています。

 『日本中の誰もが高度経済成長に浮かれていたとき、ひたすら地味に、生真面目に過ごした男が、同時に、日本を代表し、世界の芸術史に刻まれる芸術家へとおのれを鍛え上げていた』と嘆ずるように擱筆した本書は、この評伝選の狙いとする、現代日本を物語る生き証人の役割を確かに果たす一冊となることでしょう。
 知れ渡った歴史上の人物とならんでは、誰が見ても、まったく出色の新人です。この本がどのように世人に見られるか、この評伝を通してどのように井上有一が世に迎えられるか、彼の果たした書家としての努力が、世界に開かれた現代美術にどのような役割を果たしていたのか、この本ではっきりわかります。この機会に一人でも多くのみなさまにお読みいただきたく、ご案内申し上げます。

ミネルヴァ書房刊 TEL.075-581-5191 FAX.075-581-8379
四六版上製カバー(本文317頁)
ウナックトウキョウでもご注文を承ります。(ご希望の方には著者署名入り)
定価 2,700円+税(送料別 340円)
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主な内容(目次より)
はじめに―豪快な芸術家/平凡な教師
第1章 東京大空襲
第2章 失意・復活・デビュー
第3章 墨人会結成
第4章 愚徹への道
第5章 カボチャ先生
第6章 五十代の危機
第7章 作品集を作る
第8章 最後の戦い
参考文献
あとがき
年譜
人名・事項・作品紹介
帯の賛辞 糸井重里

 


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